掛軸の箱が教えてくれた「本物」
皆さまこんにちは、大徳美術店主の髙橋です。大雨に地震と自然の災害に悩まされますが、十分注意して日々を過ごして行きましょう。
ところで先日、一幅の掛軸を購入しました。状態を確認しようと桐箱を開けると、箱の底から切り抜きされた古い新聞が出てきました。昭和50年代の新聞でしょうか。前の持ち主が掛軸を保護するために敷いていたものだと思います。

何気なく読み始めると、植物生態学者・宮脇昭先生のインタビュー記事でした。
その中で印象に残ったのが、「本物の緑」という言葉です。街路樹や公園に木が植えられていても、それだけでは本物の自然とは言えない。
その土地に昔から育ってきた木々が根付き、先祖が守り続けてきた鎮守の森こそが、本来の自然なのだという内容でした。
この記事を読んでいて、思わず骨董の世界と重なりました。掛軸も同じです。本紙が良くても、後から安価な裂地で仕立てたり、その場しのぎの表装をしてしまうと、見た目は整っても作品本来の品格までは蘇りません。その時代、その作品にふさわしい裂地を選び、丁寧な表具を施してこそ、本来の美しさが引き立ちます。
自然にも骨董にも共通するのは、「形だけでは本物になれない」ということ。長い年月を経て受け継がれてきたものには、時間だけが育てる風格があります。
今回は掛軸を買ったつもりが、一枚の古い新聞記事から「本物とは何か」を教えられました。
骨董はただ古いものを集める趣味ではありません。そこに流れた時間や、人の手・人の想いに触れる世界です。
だからこそ私たちは日々本物を見極め、本物を次の世代へ受け継いでもらう責任があるのだと感じていますし、その思いで五十数年頑張ってきました。
ぜひ大分県の方々、骨董品・古美術品がございましたら大徳美術までご一報ください。すぐに日程を合わせてお伺いさせていただきます。
※急なご来店は買取に出掛けていて留守の可能性がございます。店舗に来られる際もご一報ください。

